起源

医王ジ-ヴァカ師
それは、およそ2500年前、インド・ブッダの時代にさかのぼり、そのブッダの主治医であったジ-ヴァカ師が創始者と伝えられている。 そのジーヴァカ師は、小児科医としての名声を博したが、自身の犯した罪により悔恨の念を抱き、病気に臥しブッダに帰依したとされる。 これより、ジ-ヴァカ師は森や山で静かに目を閉じ瞑想をし、慈愛をもって治療を行っていたのであろう。 そして、仏教経典『四部律』には脳手術の記録もあり、師は医王と尊称されるようになった。 

タイ古式マッサージの精神
この先、師またはお弟子様がタイ王国に渡り、タイ古式マッサージを伝えたとされるがその詳細は明らかではない。 しかし、現代のタイ古式マッサージにおいて、施術者側には瞑想呼吸法が伝授され、施術を受ける側には瞑想状態(無心)の効果があり、エネルギーライン(セン)を整えることが教えの根本であり、別名「二人で行うヨガ」とも呼ばれている事実がある。 このヨガも段階的に瞑想によって悟りを目指す道である。 これらを踏まえると、タイ古式マッサージはジ-ヴァカ師の悟りの道を凝縮したものであり、その結果、人に無心状態を施し、エネルギーラインを刺激して人が本来持つ自然治癒力の活性化をもたらしたと考えられる。 人に施すといっても簡単ではない。 私たちの心の中には四六時中、成果を求めたり、社会的成功を求めたり、生活の心配をしたり、自意識を守るなどの数々の想念が湧き出てくる。 このような雑念がある中で開発されたものは根源に到達できず2500年の歴史の中でふるい落とされるであろう。 ジ-ヴァカ師の高貴な人格が、今でも世界で拡大し続けているタイ古式マッサージの精神を生み出したに違いない。 私たちは、毎日ジ-ヴァカ師像に手を合わせて祈ります「神様、私たちが良いマッサージができますように、そしてお客様が癒されますように」。

タイ伝統医学との融合と発展

タイ伝統医学
タイ伝統医学の歴史は2500年前にさかのぼるとされ、宇宙の構成元素理論「土、水、風、火の4つの元素」とそれによる宇宙との調和、健康で幸せに生きるということを主眼としている。 この宇宙という概念は、「空」の概念が欠けているものの、インドやヒマラヤ、チベットなどの信仰や修行と通じるところがある。 中国の漢方医学や指圧にも影響を受けている。 地図を見ていただくと分かるが、タイはそのような地理的ロケーションであり、タイ人の顔もインド系や中国系など様々であることからも、周辺国との交流が盛んに行われていたことが分かる。 また、タイ伝統医学は、薬草療法や栄養療法、祈りの療法、タイマッサージの4つに分類されており、マッサージはその一つである。

風の流れ「エネルギーライン(セン)」について
タイの4大元素「土、水、風、火」のバランスが崩れると体に不調を感じ、このバランスを整えることで、健康で幸せに生きる日々を過ごせると考えるのが、タイ古式マッサージである。 その中で「風」は、プラーナと呼ばれ、生命エネルギーを体全体隅々まで運んでいく役割があり、タイ古式マッサージは、その「エネルギーライン(セン)」に沿って施術を行っていき、エネルギ-の滞りを正常に流して風通しを良くし、過剰であれば外に放出する。 ここまででヨガを学んだ方はお分かりだと思うが、「2人で行うヨガ」と呼ばれるゆえんの通り、タイ古式マッサージには人格を高め、悟りを求める伝統が脈々と流れているのだ。 これゆえ、タイ古式マッサージの施術者やお客様には何か崇高な運命のようなものを感じる。

宇宙の構成元素の「水」である「足」はとても重要 
人は、宇宙エネルギーとのバランスで肉体や精神の活動を行っている。 呼吸による空気や食事による栄養は、人体に入ってから生命エネルギー(プラーナ・気)に変わり、エネルギーラインを通って全身に供給される。 私たちの体の中には、この主要なエネルギーライン(セン)が10本あり、宇宙エネルギーが巡っている。  タイ古式マッサージでは、このセンを刺激して、エネルギーラインの風通しを良くするのだが、この10本のうち6本のセンが、足の付け根から足裏(以下、足という)の部分に集中しており、足が重要な要素としている。 この足のエネルギーレベルは宇宙の構成元素「水」であり、血液やリンパ液をつかさどり、これが全身に行き渡る作用をもつ。 また、足の付け根には「風穴」を開けるツボがあるとされ、風通しの起点もこの足にある。 これゆえ、タイ古式マッサージはこの足を重視し、施術の初めに行っている。 もっと具体的には、足を施術しないマッサージの効果は一時的であり、元に戻るとタイの学校では教えている。 タイ古式において、足を省略したクイックマッサージをおすすめしない理由がここにある。 また、日本において足という漢字は、なぜか「足りる」「満足する」「足す」などのポジティブな意味に多用されている。 「足」はとても感慨深い。

苦難と隆盛
その後、中国の漢方医学とタイの経験医学が重なり、シャムの国となった14世紀頃から17世紀の間に寺院を中心にタイ古式マッサージが確立されるが、残念ながら1776年ビルマ軍の首都アユタヤへの侵略によって、マッサージのテクニックに関する医学書物の大部分を失うこととなる。 しかし、1832年ラマ3世が、タイ古式マッサージを再興させるため、バンコク最大の寺院ワット・ポーの石碑にマッサージのテクニックを刻み、同寺院にマッサージの教育施設を設立した。 この大いなる功績により、民衆でも石碑を見て勉強することができ、また寺院において体系化された教えを習うことができるようになった。 そして、民衆は家に帰り、年老いた親にマッサージを施したのであろう。 どんどん生活の中にマッサージが根付いていった。 このシャムの国の時代に、タイ古式マッサージは大きく発展したのである。

タイ古式マッサージの効能

タイ衛生省の掲げるタイ古式マッサージの効能は以下の通り。
単に「コリをほぐす」だけではなく、体質改善やエステやメンタル効果にまで言及している。

■体質
胃弱・慢性胃炎・便秘・下痢・食欲不振・体力増強・老化防止・風邪の予防・高血圧・低血圧・貧血・血行障害・冷え性・生理不順・不妊症・ぜんそく・アレルギー

■コリ、疲れや痛み
筋肉痛・腰痛・肩こり・眼精疲労・首や背中の凝り・リウマチ・膝の痛み・足のつり・足の疲れ凝り・疲れによる全身のだるさ

■エステ
肥満防止・太りすぎ・お腹を引っ込める・腹部の贅肉をとる・ウエストラインを美しくする ・足のむくみをとる・脚の線を美しくする・ 肌の新陳代謝促進・しわの減少

■メンタル
不眠症・ヒステリー・興奮を静める・イライラの解放

世界に広がるタイ古式マッサージ

世界では高い認知度
世界の中で、突出して成長しているマッサージが、タイ古式マッサージと言う人もいる。 
これは、タイ古式マッサージの確かな技術に共鳴した欧州人が、タイに来て勉強し、その技術を祖国で広めているし、逆にタイ人が外国に出向いて技術を広めているのだ。 タイ人はとても好奇心旺盛で海外に踏み出す行動力豊かな民族である。 

■タイ古式マッサージは「世界で一番気持ちいいマッサージ」と呼ばれる。
■2019年には「ユネスコ無形文化遺産」に登録。 世代を超えて継承すべき伝統的な価値のあるものと認定。

日本文化との融合と発展
近年日本人もタイに行き、マッサージを勉強して免許を取得している。 送り迎えや寮・食事も準備し、集中セミナーを受けることができるのだ。 在日タイ人にも変化が起きている。 来日すぐのタイ人は、たいてい日本人の仕事の厳しさやお客様第一の精神に驚くが、その後日本文化に感化され、タイにいた頃よりも数段マッサージが上手になった方を大勢見てきた。 店によるがタイよりも在日タイ人の方がマッサージが上手という話も耳にする。 世界が認めるタイ古式マッサージと古き良き日本文化との融合で更なる発展がはじまっている。