茨城県で一日のほとんどをベットですごしている95歳の父は、昼間に大声で「おーい、おーい」叫んでいた。 目もしっかり開いている。 しかし、心は遠く離れた北海道の今金町にいるようだ。
どうやら、今金町の役場の近くのおばちゃんが家にいなくなり、心配し、皆で会議を行っているようだ。 その言葉はとても丁寧かつ冷静であり、「夜暗いが・・・皆でまず手がかりを探そう」など話し合いを行っている。 先ほど大声を上げていたのは、人を集めたり、行方不明者を探しているためであろう。 はなから警察頼みにはしない、困っている人は、皆で協力して助けると言っている。 知らないおばさんだというが、とにかく心配している。 さすが、今金町の人だと思う。
2時間ほど続き、興奮してベットの柵に腕をぶつけて内出血もしたりした。 そして、おそらく疲れたのであろう。 静かな吐息で眠りについた。
茨城県に来て、7年を経て、すでに身体の自由も効かない父であるが、その精神はまだお人助けを続けている。 寡黙な父は、寝たきり状態でも、今もなお遠く離れたふるさとを守ろうとしている。